歯周病と動脈硬化(1)

歯周病原菌が血管の内側の細胞(血管内皮細胞)の中に入り込むと、この血管内皮細胞が傷害を受けます。

傷ついた血管内皮細胞は、その表面にセレクチン、ICAM-1、VCAM-1と呼ばれる接着分子を発現し、血液中の単球と呼ばれる細胞と接着します。血管壁にくっついた単球は、血管内皮下に進入し、そこでマクロファージと呼ばれる細胞に形質転換します。ここでマクロファージはTNFαと呼ばれる物質を分泌し、接着分子の発現を促進し、仲間を呼び込みます。

また、HB-EGFなる物質を分泌して血管壁を構成している平滑筋細胞を内側に遊走させ、増殖を促し、血管壁を厚くしてしまいます。そして、血管壁に入り込んだ悪玉コレステロールの酸化LDLをどんどん食べて太ります。

太りすぎたマクロファージは血管内皮下から出られなくなってしまい、そこで壊れて粥状のプラークとなり、動脈硬化が進行してしまいます。

歯周病と動脈硬化(2)

アデイポネクチン

聞きなれない言葉ですが、人の脂肪細胞から分泌される生理活性物質(アデイポサイトカイン)の一つでその役割は主にインスリン抵抗性改善作用(糖尿病になるのを防いでくれる作用)と動脈硬化抑制作用(人の健康を維持する上で大変有用な作用)を持っています。

アデイポネクチンが働くためには、体の各細胞に情報を伝えるためのレセプターが必要になります。

歯周病が悪化すると、歯周病菌の持つリポポリサッカライド(Lipopolisaccharide,LPS)にマクロファージという細胞が反応してTNFαという物質を出します。

このTNFαがインスリン抵抗性を高め、それが高インスリン血症を誘発し、高インスリン血症がアデイポネクチンのレセプターの発現を抑えてしまい、結果的に動脈硬化進行の要素になってしまいます。